最高裁判所第三小法廷 昭和42年(オ)842号 判決 1969年4月15日
上告人
品田治吉
代理人
林信一
被上告人
札幌拓殖倉庫株式会社
代表者
池田一郎
被上告人補助参加人
増本製茶株式会社
右代表者管財人
藤田光則
主文
本件上告を棄却する。
上告費用は上告人の負担とする。
理由
上告代理人林信一の上告理由第一ないし第三点について。
原審の確定したところによれば、本件各倉荷証券には、倉庫証券約款として、「受寄物の内容を検査することが不適当なものについては、その種類、品質および数量を記載しても当会社(被上告人)はその責に任じない」旨の免責条項の記載があつたというのであるが、右免責条項の効力を認めたうえ、倉庫営業者は、該証券に表示された荷造りの方法、受寄物の種類からみて、その内容を検査することが容易でなく、または荷造りを解いて内容を検査することによりその品質または価格に影響を及ぼすことが、一般取引の通念に照らして、明らかな場合にかぎり、右免責条項を援用して証券の所持人に対する文言上の責任を免れうると解すべきものとした原審の判断、ならびに原審の確定した事実関係(その事実認定は、原判決挙示の証拠関係によつて首肯するに足りる。)に照らせば、本件各証券に表象された木函入り緑茶は、その荷造りの方法および品物の種類からみて、一般取引の通念上、内容を検査することが不適当なものに該当する旨の原審の判断は、ともに正当として是認しうるものである。したがつて、原判決に所論の違法はない。所論引用の大審院昭和一一年二月一二日判決・民集一五巻五号三五七頁の事案は本件に適切でなく、また、大審院昭和一四年六月三〇日判決・民集一八巻一一号七二九頁の判示するところは、原判決とその趣旨において異なるものではない。論旨は採用しえない。
同第四点について。
所論の点に関する原審の事実認定は、原判決の挙示する証拠関係に照らして首肯するに足り、右事実関係のもとにおいては、被上告人には本件倉荷証券を発行するにあたり、受寄物の内容の検査を行なわなかつたことをもつて、善良な管理者の注意義務を怠つた過失があるものとはいえない旨の原審の判断は正当として是認しうるものである。したがつて、原判決に所論の違法はない。論旨は、これと異なる見解に立つて原判決の判断を非難するにすぎないものであつて、採用するに足りない。
よつて、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。(松本正雄 田中二郎 下村三郎 飯村義美 関根小郷)